INTERVIEW

“「究極」の競技”

田村友絵

様々な力が求められる「究極」の競技

─アルティメットという競技について教えてください。

フライングディスクを落とさずにパスをつなぎ、コート両端のエンドゾーンでキャッチすると得点になるチーム競技で、アメフトとサッカーを合わせたようなスポーツといわれています。縦100m×横37mの広いコートを動き回る持久力、フライングディスクの操作能力、自己審判制の競技として自立した精神力と、様々な能力が求められることもあり、競技名は英語の究極(ultimate)が由来です。
日本は技術面で先行していて、世界大会でも上位の結果を残しています。特にスローの幅や球種の豊富さ、細かくパスをつないで相手を翻弄する技術はトップクラスだと思います。

─アルティメットをはじめたきっかけはなんでしたか?

運命的な出会いとかあればよかったんですけど、全然で(苦笑)。人見知りな性格もあって、大学のアルティメットサークルに入る友達についていったんです。フリスビー(フライングディスク)を投げるくらい、遊び感覚で簡単そう!と思ったんですが、競技用の厚いフリスビーはなかなか上手く投げられなくて。いつの間にかはまっていました。
でも、社会人になって仕事との両立が難しかったのと、ひざの調子を悪くして、一年半ほど競技を離れました。その後、競技に復帰したきっかけは…さっきの友達がクラブチームでプレーしていて「メンバーが足りないから試合だけでも出て」と誘われたからです(苦笑)。

自分の武器を見つけて前向きになれた

─競技を通して、自分の変化を感じることはありますか?

物事をポジティブに見られるようになったのは、大きな変化だと思います。2016年に日本代表に選ばれてチームメイトになった選手たちは、ポジションごとに求められる技術に特化した人ばかり。私には武器といえるほどのスキルがなかったし、気持ちの面も「誰にも負けたくない」というハングリーさは持てず、監督からは「プレーも気持ちも中途半端」と言われて悩んでいました。
そんな時、チーム内の話し合いでメンバーから「友絵ちゃんは平均以上に何でもできるよね」と言ってもらえたんです。私の武器は、オールラウンダーであることなんだと思い直して、それならすべての技術を上げればいいと前向きに考えられるようになりましたね。
所属チームでは、パスをたくさん出してゲームを組み立てる「ハンドラー」というポジションにつくことが多いのですが、ポジションの役割にとらわれすぎず、臨機応変に動けるのが自分の強みだと思っています。

─1週間のスケジュールや、オフの過ごし方を教えてください。

平日は会社で働いていて、終業後にジムへ通って個人のトレーニングメニューに取り組みます。体幹を鍛え、インナーマッスルを養うトレーニング、ランメニューなどを頑張っています。食事のバランスも気を遣っています。25歳までは好き嫌いが激しくて、栄養士さんから「あなたの食事が一番ダメ」と指摘されたので(苦笑)。
土日はチーム練習です。月曜日は身体を動かさず、土日の練習を振り返ったり、過去の映像を見比べたりと頭を使う日にしています。平日も、お昼を食べながら試合の動画を見たり…今は時間さえあればアルティメットのことばかりです。でも、メリハリも大事。動物が大好きなので、この前チームメイトが働いているふくろうカフェに行きました。カピバラとかも放し飼いにされててめちゃめちゃ癒されました…。

仕事と両立させる難しさ

─競技を続ける中で大変に感じることはありますか?

まず伝えたいのは、アルティメットをはじめとしたマイナースポーツを支援してくださる方々や、選手の想いに共感してくださった企業からのご支援があり、とても感謝しているということ。オリジナルのグッズももうすぐできますし、家族も試合を観に来てくれたりと、多方面から活動を支えてもらっています。
ただ、遠征が多いので仕事との両立は厳しい面もあります。私も含め、平日も練習や試合に専念したい選手も多くいますが、まだまだ認知度の低い競技なので難しく、金銭的な面で試合への参加を見送ることも。そういう意味でも、アルティメットという競技を広く知っていただけたらと思っています。

─今季からMUDのチームキャプテンに就任されました。どんなチームにしたいですか?

みんな自信を持ってプレーできるチームにしたいです。MUDのカラーでもあるのですが、あまり自信がないというか気持ちがやさしい子が多い。まずは自分を信じて、お互いの良さを認め合える雰囲気をつくりたいですね。ポジティブな雰囲気づくりへの思いが強すぎるのか、チーム内ではよく「ガヤ芸人」とか「ひな壇芸人」って言われるんですけど(笑)。チームメイトへのスキンシップも多めかも(笑)。
とはいえ、私も自信をなくすことはあります。自分が活躍できたときの映像を見返して試合に臨むこともあります。

オリンピック種目になることを目指して

─アルティメットを今まで続けてこられた理由はなんだと思われますか?

アルティメットの楽しさ、競技そのものの魅力に気付いたというのは大きいと思います。初めは、みんなでプレーすることが楽しかったんですけど、アルティメットはさまざまな身体能力を活かせるし、フライングディスクは投げ方によって独特の軌道を描いて飛ぶので、どこまでも技術を追求できる奥深さがあります。球技では見られないディスクのせめぎ合いは、見ていても楽しいと思います。

─この先、やってみたいことがあれば教えてください!

プレーヤー個人としての目標は、2020年の世界大会と、2021年のワールドゲームズの代表に選ばれること。特に、ワールドゲームズは男女混合チームの「ミックス」だけの大会なので、アルティメットの全選手から男女7名ずつしか選ばれません。そこでプレーできることは誇りですし、周囲からもたくさん応援してもらえます。
将来は、アルティメットの魅力を広く伝えたいという思いがあります。フリスビーが持つ遊びっぽいイメージは、試合を観てもらえたらいい意味で裏切れると思います。そのためにも、アルティメットがオリンピック種目になってほしい。アルティメットはアメリカ発祥ですし、アメリカは強豪国なので2028年ロサンゼルス五輪で選ばれる可能性はあると思っています。私も採択に向けた活動に関われたらと思っています。
今すぐにではありませんが、アルティメットのスクールを立ち上げてみないかというお話もいただいています。ジュニア世代に競技の魅力を伝える機会は、競技人口を増やし、認知度を高めていくためにも大切なので、いつか実現できたらうれしいですね。

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